星の王子さま
星の王子さま🌟
何度読んでも色褪せない、
初・読書感想文記事には大好きなこの本を選びました!
今回はこちらの稲垣直樹さん訳、平凡社ライブラリー版で読みました。
文庫サイズでハードカバーなので、絵本を読んでいるようでした。
紙の厚さも普通の文庫本とは違い一枚一枚がしっかりしており、イラストも大きくカラーで印刷されているので、絵本を読んでいるみたいで楽しめました!
さっそく感想!
(より読書感想文っぽさを出すため、敬語を省略しています)
幼い頃、一度星の王子さまを読んだことがある。
当時の記憶は曖昧だが、私にとってこの物語は『王子さまが旅をする話』だった。私が感情移入する相手は『子ども』の象徴である王子さまだったのだ。
しかし高校を卒業したあたりで改めて星の王子さまを読み返したとき、もう私にとって星の王子さまは『王子さまが旅をする話』ではなかった。この物語は『王子さまと出会った"ぼく"の話』なのだと感じたのだ。そしていつでも、私が子どもの心を忘れたときには『子どもの夢物語』に成り得てしまうだろう。
それほどに星の王子さまは繊細で、現実的な物語だ。
物語の冒頭、テグジュペリはこの本を『少年だったころのレオン・ヴェルトに』捧げている。全てのおとなは子どもだった、そしてそのことをおとなは忘れてしまうとも書かれている。
そして物語は、主人公が読者に語りかける口調で進んでいく。主人公が語りかけるのは、本を読む『すべての子ども』だ。小さな子どもから、かつて子どもだったおとなまで、等しく本の前では子どもなのだ。
なので私も星の王子さまに対して子どもらしく感想を述べてみよう。
不思議で、絵が可愛くて、最後はちょっと切ないけどワクワクする楽しい話!
纏めてしまえばこれに尽きる。
とはいえこれでは感想文にならないので、ぽつぽつ紐解いていきたい。
物語は、主人公の幼い頃の思い出から始まる。絵本で読んだ大蛇ボアに心を奪われた主人公は、ワクワクしながら絵を描いた。それは象を飲み込んだボアの絵だったが、おとなたちには帽子の絵にしか見えない。仕方なくボアの腹の中も描いたが、おとなたちはそれよりも勉強をしなさいと言うばかり。そこで画家になる夢を諦めた主人公は飛行機の操縦士になるのだった。
(このボアの絵、可愛くて好きです。)
主人公に対する描写があまりないので想像してみよう。主人公はまだおとなの世界に染まりきっていない青年。おとなと話すときは話を合わせることができるが、目に見えるものだけを信じるおとなを良く思っていない。だから周りの『おとな』と馴染めず、独りぼっち。内向的で、俯きがちで。瞳の色は青で、髪はクリーム色、ほっそりして少し頼りなく感じる長身。(全て個人的な趣味)
とにかく絵に描いたような優男。そんなイメージが浮かんでくる。
そんな主人公の前に現れた王子さまは無邪気で、いつだって王子さまには外見だけじゃなくて中身も見えている。主人公の良き理解者だ。あっさりと象を飲み込んだボアの絵を言い当てた王子さまを、主人公はずっと待ち望んでいたのだから。
王子さまとの出会いのシーンは思わずクスリと笑ってしまう。
砂漠の真ん中に突然現れた不思議な王子さまは、しきりに「すみません……。ヒツジの絵、かいてよ……」と主人公にねだるのだ。可愛らしくて、王子さまらしい言葉で私はとっても気に入っている。
王子さまの旅
主人公は王子さまと過ごすうちに、王子さまが住んでいた星と、地球に来るまでの旅を知っていく。
王子さまの星には小さな3つの火山と、一輪のバラの花ある。
この花は気取っていてワガママで、花の優しさに気づかなかった王子さまは、星から旅立ってしまう。そして離れ離れになってから、花の優しさや自分の気持ちに気がつくのだ。
まさに、失ってから初めて気がつく、と言ったところ。
この花がなんのメタファーなのかとか、何を象徴しているのかとか、研究者や学のあるおとななら考えるだろう。
だが、それが何を表しているかは大切ではないと私は考えた。王子さまにとって花は花だ。大切でかけがえのないたった一輪の花。そうであること以上に意味のあることなんて無いのではないだろうか、と思ってしまうのだ。
話を戻して、王子さまの旅を追っていきたい。
王子さまが出会ったのは、様々な大人たちだった。
なんでも命令しなければ気が済まない独善的な王様に、称賛されることばかりを気にする自惚れ屋、酒を飲んでいることを忘れるために酒を飲む酒のみ、星を所有し永遠と数字を数える実業家、1分に一度ガス灯をつけたり消したりしなければいけない点灯夫、そして証拠を求める地理学者。
御伽噺のように語られるこれらの話は、まったく御伽噺の中だけのこととは思えない。彼らはいつでも私たちの側にいる当たり前のおとなたちだ。偉ぶったり、周囲の評価を気にしたり、酒に溺れたり、数字を全てだと思ったり、休む暇もなく働いたり、根拠のあるものだけを見ていたり。
おとなって変なの、と星々を後にする王子さまに少し悲しくなるのは、彼らの特徴は強調されているとはいえ、私の中にも彼らがいるからだだろう。
きっと子どもの頃の私なら、『おとなって変なの』と思っただけだった。
さて、王子さまは7つ目の星として、地球に降り立つ。
そして主人公に出会う前に一匹のキツネと親友になる。キツネは王子さまに大切なことを教えてくれた。
キツネの言葉はシンプルだ。
「これから、ぼくの知っている秘密を教えてあげるよ。とても簡単なことさ。心で見なければ、よく見えてこない。大切なものは目には見えないんだ」
「君が君のバラのために失った時間こそが、君のバラをかけがえのないものにしているんだよ」
「人間たちはそういう真実を忘れてしまっているんだ」
大切なものは目には見えない、この言葉は主人公も口にする。
王子さまも、大切なことは心で探さなくちゃ、と言っている。
どの言葉も難しく考える必要なく、ストレートに心に響いた。それが『星の王子さま』の素敵なところだな、と今回読み直して改めて思う。暖かみのある優しくて真っ直ぐな言葉は、まさしく本の前の『すべてのこども』に向けられている。
物語のおわりで、自分の星で咲く一輪の花がどれほど大切なのかを自覚した王子さまはついに自分の星に帰ることになる。
主人公も本の前の私たちも、王子さまとはお別れだ。
「夜、君は星空を見あげる。星空の星の一つに、ぼくが住むことになる。星空の星の一つでぼくが笑うことになる。だから、君にすれば、満天の星という星がまるで笑っているのと同じになるんだ。君だけは、笑うことのできる星空を自分のものにするんだよ」
悲しむ主人公に、私たちに、王子さまはそんな素敵な贈り物をしてくれる。
星空のどこかに王子さまがいたら、そう思って見あげる空はいつもと違って見えるかもしれない。そんな楽しみを思える気持ちを大切にしていけたら、人生はきっと幸せだ!
おしまい🌟
これからもたくさん読み返していきたいですね。
オススメの本があれば教えてください!
ではまた次の作品で。。